大判例

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東京高等裁判所 昭和59年(行ケ)42号 判決

一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、二(本件発明の要旨)及び三(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、原告主張の審決の取消事由の存否について判断する。

1 請求の原因四、1の主張について

引用例四ないし引用例八には回転軸の回転角度をA―D変換する手段が、引用例八ないし引用例一五にはA―D変換手段を使用した各種の機器がそれぞれ記載されていることは、当事者間に争いがない。

原告は、引用例四ないし引用例一五記載のものは、いずれもある測定値をデイジタルに表示するもので測定の分野に属するのに対し、本件発明に係る自在平行定規がA―D変換手段を備えているのは、被測定物の角度を測定するのではなく、作図のために、スケールをあらかじめ設定した角度に合わせるためのものであつて、引用例四ないし引用例一五記載のものと本件発明とでは、A―D変換手段の利用態様が全く異質であるから、自在平行定規にA―D変換手段を転用して単にスケールの回転角度をデイジタルに表示するようにすることは、当業者が容易に想到できるものであるとした審決の認定、判断は誤りである旨主張する。

しかしながら、本件発明に係る自在平行定規により、作図のために、スケールをあらかじめ設定した角度に合わせることができるのは、当該角度を測定し、読み取ることができるからであつて、自在平行定規がスケールの回転角度を測定する機能をも有していることは技術的に自明であり、測定機能を有するという点では、引用例四ないし引用例一五記載のものと共通しているということができるから、右各引用例記載のものと本件発明とでは、A―D変換手段の利用態様が全く異質であるとはいえない。

そして、前記のとおり、引用例四ないし引用例八には回転軸の回転角度をA―D変換する手段が、引用例八ないし引用例一五にはA―D変換手段を使用した各種の機器がそれぞれ記載されていることからすれば、自在平行定規にA―D変換手段を転用して、単にスケールの回転角度をデイジタルに表示するようにすることは、当業者が容易に想到できるものと認めるのが相当である。

したがつて、原告の前記主張は理由がない。

次に、原告は、自在平行定規において、スケールの角度変化の表示にA―D変換によるデイジタル表示を用いること自体が容易でない以上、本件発明においてデイジタル表示装置をヘツド部上に設けた点に格別の発明的工夫がなされているとは認められないとした審決の認定、判断は誤りである旨主張する。

しかしながら、前記のとおり、自在平行定規にA―D変換手段を転用して、スケールの回転角度をデイジタルに表示するようにすることは当業者が容易に想到できることであり、成立に争いのない甲第三号証、第四号証によれば、引用例一及び引用例二記載の自在平行定規は、スケールの回転角度を分度盤の目盛と遊標盤の目盛とを合わせることによつて表示するものであつて、ヘツド部上に表示装置が設けられていることが認められることからすれば、本件発明において、デイジタル表示装置をヘツド部上に設けることは当業者が容易になし得ることと認めるのが相当であるから、原告の前記主張も理由がない。

したがつて、請求の原因四、1の主張は理由がない。

2 同2の主張について

原告は、本件発明に係る自在平行定規を黒板用に用いた場合には、ヘツド部が目の高さの位置より格別離れている場合以外は、目の高さの位置までヘツド部を下げて角度設定をする必要がなく、目線を上げてその場で回転角度を正確に設定することができるという、引用例一及び引用例二記載の自在平行定規では到底期待することのできない特殊な作用効果を奏する旨主張する。

しかしながら、右作用効果は、本件発明において採用されているデイジタル表示というものが回転角度などの数値を具体的な数字で表示するものであり、数字で表示されるために視認性がよいというデイジタル表示の属性に基づくものであることは技術的に自明であり、本件発明においてデイジタル表示を採用したことにより当然予測できる作用効果にすぎないから、右主張は理由がない。

また、原告は、ヘツド部を移動させながら角度設定ができるという作用効果は、本件発明に特有のものである旨主張するが、右作用効果は、デイジタル表示手段を採用したことにより、角度変化が連続的にデイジタルに表示されることによるものにすぎず、自在平行定規にデイジタル表示を適用したことによつて始めてもたらされるものではないから、右主張も理由がない。

したがつて、請求の原因四、2の主張は理由がない。

以上のとおりであるから、審決に原告主張の違法はない。

三 よつて、審決の取消しを求める原告の本訴請求は失当としてこれを棄却する。

〔編註〕 本願発明の要旨は左のとおりである。

スケールが所定角度を保持した状態で、図板上を任意の方向に移動自在なヘツド部と、該ヘツド部に回動自在に設けられた回動部材と、該回動部材に連繋するスケールと、該スケールの回転角度をA―D変換する手段とを備え、該スケールの回転角度を、前記ヘツド部上に設けた表示装置にデイジタルに表示するようにしたことを特徴とする自在平行定規。

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